子供とエレベーター
生活の中で非常に緊張する瞬間がある。
それは子供とエレベーターが一緒になったときだ。
最近子供が悲しい事件に巻き込まれる事が多くなった為、
親や学校から不審者には近づくなと口をすっぱくして言われているんだろう。
先日も、小学校3年生位の女の子が俺のアパートのエレベーターで待っていた。
その日の朝までバッカスと化していた俺は、明らかに二日酔いで不機嫌面
だったが、子供の為を思いスマイルに切り替えた。
しかし、逆効果だったのか携帯電話を手提げから取り出して握り締める彼女。
その後もチラチラこちらの様子を伺っている。
普段から「良い人」には見られないので慣れてはいるが、子供に恐怖感を
自分が与えていると思うとさすがの俺も心苦しい。
子供を見すぎるのも話しかけるのも怖がられる。かといって音を立てずに
し~んとするのも怪しまれそうだ。
とにかく、「おっちゃんは、お前には興味ないよオーラ」を出す事が
先決だと思い、アイシャッフルをかばんから取り出すことにしたんだが、
かばんの中をまさぐる音を立てた瞬間、ばっと身構えて振り向かれた。
ロープとか包丁とかが出てくると思ったんだろう。
そうしてる間に、エレベーターが到着。
さっと乗り込む彼女。俺も忘れものを取りに来て急いでいたので乗り込んだ。
彼女は早く降りたいがため、入り口に同化しちゃうかと思うくらい密着している
のだが、逆に俺に背を向けるハメになってしまい、後ろが気になって仕方ない
様子だ。
その時ひらめいた!携帯で俺が電話をしてれば、彼女も気が紛れるのではないか!
電話をさっと取り出し、電話に向かって独り言を元気に呟く俺。
「あっ!もしもし!ホントに?うんうん♪・・」
これは結構効果的だったようで、チラ見も無くなった。作戦成功だ。
彼女の階にに着いたとたん猛ダッシュで走り去られたけどな。
家に帰ったらお母さんに言うんだろうな。。
「ママ!ものっすごい怪しいオヤジがいてね、私を見た瞬間かばんから何か
出そうとしてたの。途中から携帯で話し始めたのでスキを見て逃げてきたよ。」
それでも俺は言いたい。
「お前が襲われそうになってるのを見たら、迷わず助けてあげっからな。」
・・この話を飲み屋のおねーちゃんに話すとモテるかもしれんな。
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